このアイコニックな時計について、大事なことはすべて知っているかもしれないが、41mmのゴールドケースには、じっくり見る価値のある時計業界の過去、現在、そして未来に関する情報が詰め込まれている。前世代のロイヤル オーク クロノグラフであるが、確認すべき重要なディテールが詰まっている。
オーデマ ピゲのロイヤル オーク クロノグラフ。この時計は多くの読者に知られているので、分析する必要すらないかもしれない‐しかし、HODINKEEだからこそあえて取り上げることをご理解いただけるだろう。ロイヤル オーク クロノグラフは、世界中に何千人もの愛好家がいる一方で、少数のアンチも存在する時計だ。略称ROCは、オーデマ ピゲの2つの全く異なる購買層、つまりコレクターとそれ以外の人たちの間の中間的な存在なのだ。ロイヤル オークとロイヤル オーク オフショアは、それぞれまったく異なる層にアピールすることが多いのだが、それについてはのちほどご紹介しよう。今回のレビューでは、オーデマ ピゲ(AP)の主力モデルであり、自社製ムーブメントを搭載しないものの(前世代モデル)、興味深いオート・オルロジュリーを取り上げようと思う。41mm径ケースにコラムホイール付き垂直クラッチ式クロノグラフを搭載したつけ心地、また、ムーブメントの供給元がどこであるかということは、注目に値することなのかどうかを見ていきたい。今回のウィーク・オン・ザ・リストでは、オーデマ ピゲ ロイヤル オーク クロノグラフをじっくりとご覧いただく。
オーデマ ピゲの二面性
APは実にユニークな時計メーカーだ。 世界的な高級時計ブランドのなかで、創業者一族の手に残っている数少ないブランドのひとつであり、オーデマ一族のメンバーが現在も役員を務めている。 ヴァシュロン・コンスタンタンやA.ランゲ&ゾーネがリシュモングループ(カルティエ、パネライからアルフレッド・ダンヒル、鞄メーカーのランセル、婦人服のクロエ、オンライン専売業のNet-A-Porterまで数多くの事業体を擁する)の傘下にあることや、パテック フィリップが独立性を保ちながらもスターン家に所有権が移って100年も経っていないことを考えると、APの所有権が創業以来変わっていないことは非常に重要である。しかし、APの独立性は必ずしも175年の歴史を持つこのマニュファクチュールの最も興味深い側面ではない。重要なのは、誰がAPの時計を買うのかということだ。
この質問に対する答えは簡単だ。 私が言いたいのは、高級時計の購入層には2つのまったく異なるグループがあるということだ。つまり、コレクターと純粋に "時計好き "の層である。 コレクターとは、過去15年間、TimeZoneとPuristSに入り浸っていた人で、ウォルター・オデッツという名前を聞いて、誰だかすぐにわかるようなタイプの人物だ。 この種のコレクターは、ハンドポリッシュとハンドメイドの違いを知っているだろう。ブランド全体について議論する段階をはるかに超えて、個別の製品について語るのに十分な知識を持っている。パテック フィリップが過去100年の時計に与えた影響を敬愛し、ヴィンテージロレックスの重要性と魅力を理解しているものの、自分の心に響くものだけを購入する。一方、時計好きな人は、高級時計の経験が浅く、ブランド志向が強い傾向にある。アンバサダーや小売店、広告などに簡単に左右されてしまう。どちらもオーデマ ピゲの時計を購入するが、おそらく購入するモデルも動機も異なるだろう。
まず、コレクターの話から始めよう。コレクターがオーデマ ピゲを買うのは、偉大な複雑懐中時計の歴史があるからだ。コレクターがAPを買うのは、パテック フィリップがヘンリー・グレーブス・Jr.のスーパーコンプリケーションの複雑なリピーターの製作に技術的支援を必要としていたとき、APに助けを求めたことを知っているからだ。このように、コレクターがAPを買う理由は、枚挙に暇がない。ル・ブラッシュのマニュファクチュールは、1892年に世界初のミニッツリピーター腕時計、1921年に世界初のジャンピングアワー腕時計、1934年に世界初のスケルトン懐中時計、1972年に新たなジャンルの導入(ご存知のスポーツウォッチだ)、1978年に世界初のセンターローター付き超薄型パーペチュアルカレンダー腕時計など、長いあいだ、素材と技術の最先端を走ってきたわけだ。1986年には初の自動巻き超薄型トゥールビヨン、1994年には初のグラン・ソヌリおよびプティ・ソヌリ、1996年には初の自動巻きグランドコンプリケーション、2000年には初の均時差表示と永久カレンダーを搭載した腕時計、2009年には2重テンプを持つ“AP脱進機”を搭載した高精度クロノメーターなど、数え切れないほどのモデルを発表してきた。
今日、ロイヤル オーク パーペチュアルカレンダー スケルトン(APのコレクションのベンチマークであり、私の意見では市場で最も優れたパーペチュアルカレンダーの一つ)、ロイヤル オーク エクエーション オブ タイム、革新的なAPクロノ、そしてこのミレネリー ミニッツリピーターなどの時計は、APが間違いなくトップレベルのマニュファクチュールであることを証明している。また、ベーシックなロイヤル オーク Ref.15400に搭載されている自社製自動巻きCal.3120は、世界で最も優れた量産ムーブメントの一つだ。このように、APは "本物 "の時計愛好家に支持されているが、他のタイプのAP購入者の話題に紛れてしまうこともある。